匙屋さかいあつし ステイトメント
その昔、かの国では男が自らスプーンを削り、紋様を刻み そうして拵えた物を胸のポケットに挿し、意中の女にプロポーズをしたそうです。
僕はこの話が大好きです。
日々のこまごまとした営みを俺は工夫できるぞ!ってアピールしたのでしょう。
古代アングロサクソン語で木片を指した「spon」は「spoon 」の語源。
「掬う」という居場所を与えられ、やがて創意工夫を誇る品物にまで進化します。
手近な素材と道具を使い、工夫を凝らして日々を過ごしたこの物語は 慌ただしい日々の中で、いつも寄る辺として光を放っています。
匙屋のスプーンは、かの国で育まれた工法や道具に敬意と親近感を持ちつつも この国の風土に合う材料とこの国の食卓に溶け込む意匠に重きを置いて作られます。
そうして出来上がった物がドングリのような微笑ましさをたたえていたら大成功です。
匙屋さかいあつし